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? 最後に

 

本研究会では、地方公共団体による国際機関誘致のこれまでの事例分析及び国際機関誘致をめぐる地方公共団体の意向を整理することを主としたため、これらの作業の中から浮かび上がってきた問題点・課題について具体的な対応策を議論するには至らなかった。そのため、国際機関誘致をめぐる国と地方公共団体の連携強化についての問題意識を述べることによって本研究会報告書の最後としたい。
地方公共団体による国際機関誘致の熱意は高いものがある。一方、国際機関誘致をめぐる国の対応は、過去の例から判断する限り、あらかじめ一貫した明確な方針があったとはいいづらく、個々の事例に則して地方公共団体の意向などを踏まえて総合的に判断されてきたといえよう。
したがって、今後の問題意識としては、誘致対象国際機関を、概ね次の三つに分類整理し、それぞれの分類に応じた連携協力を国と地方公共団体が行っていくのが望ましいのではないかと考えられる。
一つは、国の立場として是非誘致を実現すべき国際機関である。この場合、国は財政的支援も含めて積極的かつ主体的な支援及び誘致活動を行うべきである。また、この場合地方公共団体の協力は国の方針に沿った補助的な役割を担うと整理されるべきである。
二つ目は、国の立場としても、地方公共団体の立場としても、誘致を実現すべき国際機関である。この場合は、国、地方公共団体双方が、2ぺージの表に掲げたような誘致に係るあらゆる面で、連携・協力していくべきであろう。
三つ目としては、誘致について国としては特段の必要性はなく、地方公共団体の自主性に任せるべき国際機関である。この場合、国は必要に応じ特権免除等の実務的交渉を行うなどの側面的支援で足りるであろう。
また、これと同様に重要な、国に期待される役割として、誘致した後の国際機関の活動等に対して地方公共団体が継続的に関与していくことに対する支援が挙げられる。国際機関の活動に対しては、地方公共団体は制度的な発言権を持たないのが通例である。しかしながら、国際機関設立の際の、授権に関する指示(マンデート/mandate)に国内機関との連携という内容が定められていれば、覚書、協定書等(MOU)に基づいて当該国際機関の長と国内機関の長が当該国際機関の運営について、連絡会等で話し合うことは容易となることもあることに留意しておく必要がある。また、通常、国際機関へ巨額の資金を拠出している我が国が、国内にある国際機関の活動に対し期待通りの成果を挙げているかどうかを継続的に検証していくことは、結果として当該国際機関の誘致に伴う諸目的の達成にも貢献するのではないかと考えられる。

 

 

 

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